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倒壊する巨塔

倒壊する巨塔〈上〉―アルカイダと「9・11」への道 倒壊する巨塔〈下〉―アルカイダと「9・11」への道

今でもアフガニスタンやパキスタンでの暗いニュースが流れていますが、世界がこういうことに目を向けるようになった、決定的なできごとがこの9.11であったのでしょう。
この本は、アメリカ人ジャーナリストが、各方面に綿密な取材を行い完成させたドキュメンタリーで、ピューリッツァ賞も受賞しています。すごくおもしろくて一気に読ませます。

 
まず、第2次大戦後、エジプトからアメリカに渡ったサイイド・クトゥブという作家の話しから始まります。
彼は、当初アメリカの掲げる理想に大きな魅力を感じていましたが、次第にユダヤ人社会を擁護する態度に激怒していきます。あわせて、イスラム社会が西欧化され、どんどん世俗化していく姿にも焦りを感じていくのです。

クトゥブは、慎み深く、敬虔な信仰生活を送る理想的なムスリム(イスラム信仰者)が、(彼が考えるところの)西欧の刹那的で享楽的な消費社会に毒されていくのに耐えられなかったようです。イスラムは、政治や経済活動、つまり社会全体を包むシステムとしての面が強く、その意味で単なる宗教にとどまらないからです。
その怒りは、最初は、そういう文化を受け入れる自国(や、他アラブ諸国)の政府に向けられていました。しかし、時代を経るにつれ、クトゥブの影響を受けた者たちは、「諸悪の根源としてのアメリカ」という視点を持っていくのです。

 
そこには産油国として、地球上もっとも裕福な人たちと、社会の底辺で苦しむ人たちのどうしようもない格差もあったと思われます。
現実のアラブ社会に幻滅した者たちは、鬱屈した不安と不満によって祖国に背を向け、イスラム復興という看板のもと、巧みな殉教への誘いによって、テロリズムという恐怖を生み出すに至りました。そこにはタクフィールという、無信仰者(この場合は、自分たちの主張するイスラム復興に賛成しない者)は殺してもいい、というゆがんだイスラム解釈もありました。

そしてその頂点が、サウジアラビアのおぼっちゃまだったウサマ・ビンラディンと、エジプトの静かな天才児だったアイマン・ザワヒリが作った「アルカイダ」だったのでしょうね。

一見宗教による戦争に見えながら、(その面がゼロではないにしても)その根底には貧困と格差が横たわっている、、ということを思い出します。別のところで見た、あらゆる戦争のほんとうの原因には貧困がある、という主張には、やはり説得力があります。

 
対するアメリカの方に目を向けると、そこには、警察機関であるFBIと、諜報機関であるCIAとの激しい縄張り争いが悲劇を招いた、という見方がされています。秘密情報の取り合いです。
私の勝手な想像で言うと、FBIの理想は逮捕で、情報を証拠として起訴しようとする。CIAの理想は籠絡で、情報が表に出たら活動ができなくなってしまう、、のかな。

そんなエピソードがどんどん出てきて、読んでいるうちはスリリングなんですけど、、はぁ、読んだ後はなんだかため息が出ます。ノンフィクションですからね・・。

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